還暦野球~さわやかな敗戦~

 負けた。初回2失点のその裏、わたしの左前打から4連続ヒットで3点を取って逆転。試合はそのまま7回を迎え、マウンド上のわたしはひそかに勝ちを意識した。

 三田プリンスでの7年間を経て昨年1カ月だけ三木オルウェイズに参加。以後は仕事のために欠席ばかりで、実質今シーズンからが三木におけるわたしのルーキーイヤーとなる。そんな新人にチームの命運をかけて(つまり、最近は負けが込んでいる)先発させてくれた期待に応えたい、応えられる、もうすぐチームメイトの喜ぶ顔が見られる・・・。

 対戦相手の播磨ナインスターズを甘く見たのか、勝ちを焦ったのか、詰めの直球が甘く入り、あれあれ?と思う間もなく負のスパイラル。終わってみれば3-6の逆転負け。チームの勝利に貢献できず、申し訳なさが残る敗戦だった。

 永年野球をやっていれば敗戦を忘れるすべも身についたから気分転換は早かった。というのも久々に野球の素晴らしさを実感したからだ。

 1年のブランクを経て7イニング141球を投げる体力が戻った。実戦の中でカーブの切れが戻った。微妙な指の感覚が蘇ってきた。ヒットも打てた。スピードが9割がた自信持てた。あとはうまく変化球を使うだけ。この自信復活が今後に希望をもたらしている。

 旧知との出会いもあった。この試合を担当した審判団が三田のメンバー。家にも泊めていただいたM主審、1塁にはわたしの在籍時には新人だったKさん、二塁は先輩H氏、三塁は内野手だったNさん、「今は古希野球ですよ」と語る笑顔が懐かしい。Mさんはいつも厳しい。「あんな抜けた球を投げちゃイカン,体の開きが早いぞ」。その指摘も懐かしい。

 三木のチームは打たれた選手を批判せず、励ましてくれる選手が多い。三木、三田、それぞれに地域の雰囲気をのぞかせながら、還暦を過ぎて野球にいそしむ人たちだけが持つやさしさをみせてくれた。敗戦の悔しさをさわやかな感情に変えてくれる還暦野球。

 帰宅すると三田の元監督Nさんから電話が入った。「Mに聞いた。竹本が元気に投げていたと。そりゃよかった」。全身で還暦野球の人のつながりを感じた敗戦投手。またどっぷりとその魅力にはまり始めた自分を感じている。

 

 


スポーツちょっといい話 ~ 還暦野球オヤジのスポーツ・コラム~

スポーツの「ちょっといい話」を書いていきます。還暦野球の素晴らしさ、アメリカでベースボールをとおして異文化交流を味わう喜び、などを読者の皆様にお伝えさせていただきます。

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